20

両親が離婚した次の年、姉は20歳を迎えた。
成人式には行かなかった。
母と祖母と振袖を見にいって、祖母がお金を出すと言ったらしい。母は、さも当たり前のように祖母の隣にひょろりと立っていた。
その様が姉にとってはあんまりみじめで恥ずかしくて、彼女は自分が振袖を着ることを辞めてしまった。放棄してしまった。
後日姉は泣きそうに怒った顔で私に、「せめて、母が自分で娘に振袖を着せられないことを恥じてくれれば。悲しんでくれれば。私だって着られたのに」という風なことを話していた。
すごく気持ち悪いなと思った。
私にも確実に訪れる事態だということに。

知り合いがインスタグラムのストーリーで、振袖を選びに行ったことを投稿していた。
あーあと思った。
ついにそういう時期に直面してしまうのかと。
それだけだけども。

私は多分、姉のような義理堅さとか信念みたいなものがないから ヘラヘラ祖母のお金で振袖を着ると思う。
へらへら笑って。絶対に。
姉はとても強い、そうして悲しい。

大人になりたいけれどもなりたくない。というか早く扶養を外れたい。
全部自分のお金だどうにかするのが当たり前の年齢になれば周りへのコンプレックスもなくなるのかな。そうだといい。
まあ、そんな甘くないだろうけど。

貧困は敵です。
貧困の下で子供を養育するのは罪です。
潤沢な資金と良好な精神状態と健全な家庭がなければ子をなしてはいけません。
この世は地獄でしかなく、殆ど大多数の人間が報われないようにできています。