2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

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両親が離婚した次の年、姉は20歳を迎えた。成人式には行かなかった。母と祖母と振袖を見にいって、祖母がお金を出すと言ったらしい。母は、さも当たり前のように祖母の隣にひょろりと立っていた。その様が姉にとってはあんまりみじめで恥ずかしくて、彼女…

不幸論

生きていればいいことがあるよなんて、酷く陳腐な励ましだ。生きてきて良いことがまるでなかった人間なんてきっといないだろう。私然り。ただ不幸の割合が余りにも抱えきれないくらいに大きくて、他人の幸福の残りカスとか切れ端みたいなしょうもないたまの…

今日という日に

不可逆性の愛にじっくり火を通していたら、固く濁ってもう元には戻らなくなってしまった。今日も明日も明後日も失敗ばかりの小石を積んで私は人々の死を待ち続けなければならないのだろう。どうやったって辛いものは辛いのだし、少しでもいいから惰性で満足…

教育とエゴ

父親は前にも述べた通り私に幼児性を見出すことを何より嫌った。彼は根本的に子供を育てるのに向いていなかった。というよりも、子供を育てるという意識がまるでなかったらしい。彼は女を育てていた。性的な意味でなく、私をきちんと女として育てていた。父…

受診にあたり

自分を取り繕う癖がある。ごみくずのような人間の癖に自分を愛してやまないために、先生相手にすら自分を良く見せようとしてしまう。呆けたことを認めず表に出さず、介護の必要性を伝えることのできない老人のそれとなんら変わらない。どうしようもない。自…

病める夏

夏はいつだって寛容だ。春夏秋冬、悪事を押し付けられるのは専ら夏だ。夏のせいにすればなんだって赦される?安易な言い訳とサンセットとクロックス、彼等を区劃すべく太陽は愚直に昇る落りるを繰り返す。1年に大凡70回とかそこら。コンクリートとアスファル…